ウラジーミル・ナボコフ『アーダ』に描かれるユーモアだらけの遊戯
先日、若島正による新訳で出版されたナボコフの『アーダ』。訳者自身が「本書はなによりもまず、とびきり楽しい小説である。ナボコフの全作品の中で最もエロティックかつユーモアにあふれている」と話すように、まさにこの物語は多彩な交わりと言語遊戯が含まれているのだ。
数年前にナボコフ『ロリータ』を読んだときには、ニンフェットたる少女たちの戯れの様子に魅せられたものだったが、『アーダ』においてもヴァンとアーダの戯れは艶めかしく、そして時折滑稽な程の比喩と共に語られる。こうも魅力的かつエロティックに魅せてくれる文章はナボコフ特有ともいえるかもしれない。
更に、そういった男女の戯れだけでなく、言語遊戯が止めどなく会話に挟まれる。ヴァンとアーダは共に多くの書物を読破していて、如何にも博識といった風に詩や格言を会話の中で鮮やかに引用する。
勿論ナボコフの書き表した遊戯はこれだけには収まらない。メタ文学的に、トルストイやプルーストなど多くの作家、作品が文字られたりするし、アルファベットで文字を作って点数を競う遊びや単純にアナグラムなど、おさまることを知らないほどに、どの章を読んでも遊びに溢れているのである。
正直、あまりに幅広過ぎてついて行けてない部分もあったと思うのです。笑
因みにこんな文章があってさすがにあっけにとられてしまった。
最近あまりマンハッタンに行ってないみたいだね――どこでそんなに日焼けしはったん?
いやはや、勿論すべてがこんな陳腐な洒落じゃないことは言っておきたい。もっと、洒落が言葉通り洒落でありえる文章がいっぱいなのです。
物語が長いからか忘れてしまいがちだが、そもそもテラと言う言葉の持つこの小説の世界の構造的な部分でもナボコフは仕掛けている。きっとこの本を巡っては、話のネタが尽きないと思うのです。ぜひ読んでみて下さい。
さて、最後はヴァンがアーダに送る書き出しだけの詩を、
アーダ、我らが愛欲と園亭…
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