仄暗いほど柔らかい

晴読雨読の日々をつらつらと...

2018-01-01から1年間の記事一覧

短歌という衝撃に魅せられた今年を振り返り、印象的だった短歌たちを紐解きつつ読み返す。

【備忘録的な今年の振り返り(読み飛ばしても問題無しです)】 忘れもしない2018年5月21日、私はブックオフである歌集を手に取った。 それを手に取ったのは、私が舞城王太郎好きだったことに起因していて、アマゾンで舞城を検索した時に、その長くて印象的な…

笹井宏之「てんとろり」から、好きな短歌5首

前回に引き続き、今回は「てんとろり」から5首!「てんとろり」には「ひとさらい」よりも更に多くの短歌が収められているので、本当は5首では足りないところですが・・・ まずは何といってもこれです。

一番好きな歌人 笹井宏之 「ひとさらい」の好きな短歌5首

私の一番好きな歌人笹井宏之さん。彼の短歌は数ある短歌の中でも特別で、柔らかく温かい読み心地と上の句から下の句への美しい飛躍を見せてくれるのです。 えーえんとくちからえーえんとくちから永遠解く力を下さい 七五調で普通に読めば「永遠と口から」と…

土岐友浩「Bootleg」一首鑑賞

最近までKindle Unlimitedに加入していて、現代歌人シリーズや新鋭短歌シリーズを結構な冊数読み漁りました。その中で、土岐友浩「Bootleg」から一首、好きだった短歌を紹介します。 Bootleg (新鋭短歌シリーズ) 新品価格¥1,836から(2018/9/8 13:31時点) い…

短歌ムック「ねむらない樹」で好きだったもろもろ

短歌を知り、短歌を書き始めてからまだ二か月しか経っていない。それで今は歌集を読み漁っているのだけれど、今回この「ねむらない樹」を読んだらまた買いたい歌集が増えた。 この創刊号の特集「現代短歌100」はとてもよかった。一首一首にコメントが書いて…

「月に吠えらんねえ」を読んだ詩的私的な感想

その日は空腹だったと思う。 青猫のそばで、二極両面のジレンマを、祝福と惨状を見ていた。どちらも酷く気持ち悪かった。 ああ、この生温い空気ですら今は心地良い。しかしこれは現実の私の話だった。 きっと何かを願ってしまったのが始まりだったのだ。それ…

「雪国」や「伊豆の踊子」を楽しめなかった人に薦めたい川端康成作品5選!

「雪国」や「伊豆の踊子」で有名な川端康成。しかし、読んでみたら全然よく分からない。これがノーベル賞なのか?そんな風に思った人もいるかと思います。 今回はそんな人にもお勧めできる "面白い" 川端康成作品を紹介します。 1.みずうみ みずうみ (新潮文…

「失われた時を求めて」を読むために、或いは楽しむために重要な本5冊.

フランス文学の中でもとりわけ存在感の大きいマルセル・プルーストの「失われた時を求めて」。その膨大なテキストに対し、多くの批評家が様々な視点からこの物語を解析しているのだが、そのどれを取ってみても面白い!しかし、この小説は逃げ水の様な小説だ…

ポール・オースターという"非在" 【ニューヨーク三部作(幽霊たち, ガラスの街, 鍵のかかった部屋)】

ポール・オースターと言えばニューヨーク三部作が有名である。何故有名なのかは正直読めばわかる。これは普通の小説とは違う異質を纏っているのだ。 この三部作に通底していることとして、私は "非在感" を挙げたい。それは、主人公ないし著者自身に関しても…

国立西洋美術館の常設展がとても楽しかったという話。

先日、上野にある国立西洋美術館に行きました。たまたま国際博物館の日でして、常設展が無料で観覧できました。ちなみに、ここは毎月第2、第4土曜日は常設展が無料らしいです。 www.nmwa.go.jp 大まかになのですが、常設展では①15~17世紀くらいの宗教画 ②印…

モダンアート再訪で面白かったもの

少し前に埼玉県立近代美術館で行われている[モダンアート再訪]という展覧会に行ってきました。 会場に入ってすぐ左、そこにはサルバドール・ダリ「ポルト・リガドの聖母」がある。その左側には藤野一友「抽象的な籠」がある。まずこの二つの絵が、私にとって…

九十九十九という存在は一体何だったのか。舞城作品のストーリーの意味【舞城王太郎】

今朝、舞城王太郎の「九十九十九」を読み終えた。そしてやっぱり舞城は長編になればなるほど良いと感じました。舞城作品は長くなればなるほど複雑な世界が形成され、意味不明なことが一杯起こるのだ。 【一応ネタバレ注意】 さて、一章を読んで二章を読むと…

マンガ好きなら知っておきたい!マイナーなオススメ漫画を紹介!【マイナー漫画】

ジャンプやヤンマガなんかが週刊誌としては人気かもしれない。しかし、アフタヌーンやモーニングからも隠れた名作が次々と生み出されている。最近アニメ化をして絶大な評価を得た「宝石の国」もアフタヌーンで連載されている漫画だ。 さて、今回紹介する漫画…

「くまのもの 隈研吾とささやく物質、かたる物質」素材と構造の面白さを教えてくれた

これまた一か月程前のことですがタイトルの展示会に行って参りました。東京大学建築学専攻が編集している「もがく建築家、理論を考える」という本を読んでから建築に興味を持ち始め、まだ素人ですが取り敢えず見に行ってみました。 タイトルに物質とある様に…

アンナ・カヴァンは何を書いたのか。~出産への嫌悪、夢想と幻想の行き先~

先日「愛の渇き」を読み終え、これで邦訳されているカヴァン作品は全て読み終わりました(多分)。 まずは簡単な分類を、 原書の出版年月は画像の通りで、左のものほど古く、右のものほど新しいです。 ●短編集 「われはラザロ」「アサイラム・ピース」「ジュ…

「ルドン-秘密の花園」の感想をつらつらと...

もう一か月程前のことなのですが、東京の三菱一号館美術館で行われているルドン展に行ってきました。美術に関心を持ち始めたのが専ら最近のことなので、展示されているすべての作品を楽しく見ることが出来たわけではないですが、幾つか気に入った絵を見つけ…

言語破壊装置としてのダダ。ツァラによる「ダダの詩を作るために」と言う名の作詩法。

塚原史「ダダ・シュルレアリスムの時代」を読んでいるのですが、これがめちゃくちゃ面白い。シュルレアリスムという単語は聞き覚えがある人も多いかと思いますが、ダダという言葉はどうでしょうか?丁度ダダに関する章を読み終えたので、面白いと思った箇所…