仄暗いほど柔らかい

晴読雨読の日々をつらつらと...

土岐友浩「Bootleg」一首鑑賞

 最近までKindle Unlimitedに加入していて、現代歌人シリーズや新鋭短歌シリーズを結構な冊数読み漁りました。その中で、土岐友浩「Bootleg」から一首、好きだった短歌を紹介します。

 

Bootleg (新鋭短歌シリーズ)

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いちにさんしと数えたら春が来て〈し〉は〈うれしい〉の〈し〉かもしれない / 土岐友浩

 この短歌の恐いところは、〈し〉が単純に〈死〉である可能性をむりやり回避している所だと思います。もし〈うれしい〉ではなくて〈しあわせ〉の〈し〉とかだったら、そのままの意味でとってしまい〈死〉を避けたとは言い難くなるけれど、〈うれしい〉の〈し〉というのは上手い。無理やり避けている感がでている。そしてこの無理やりすぎる点がこの短歌を強くしているのだ。