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モダンアート再訪で面白かったもの

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 少し前に埼玉県立近代美術館で行われている[モダンアート再訪]という展覧会に行ってきました。

 会場に入ってすぐ左、そこにはサルバドール・ダリポルト・リガドの聖母」がある。その左側には藤野一友「抽象的な籠」がある。まずこの二つの絵が、私にとっては圧倒的だった。

 ダリのこの絵は中央に原子爆弾を置いた絵で、聖母や聖母に抱かれた子は胴体に四角く穴が空いていて、彼らの周りを囲う枠のようなものも途切れ途切れだ。これが原子爆弾に関連して、何か分解してしまっているような、或いは空虚が齎されているかの様な、そういった印象を受けるとともに、単純な絵の精密さや色の組み合わせや影のつけ方など、様々な点で惹かれるものがあった。

 隣に並ぶ藤野一友の絵が、ダリの絵の雰囲気に似ているのは偶然ではないと思うが、彼の絵の起源は良く知らない。しかし、かの三島由紀夫澁澤龍彦らが熱愛していたとのこと。また、SF作家フィリップ・K・ディックの小説「ヴァリス」の表紙の絵が、正にこの抽象的な籠である。

 更に進んでいくと、オチオサムの球の遊泳Ⅱがあった。キャンパスに置かれた大小様々な球体と多色な曲線や直線が繋いでいる様な絵である。妙に数学っぽさが感じられて面白かった。

 もっと進むとアクションアート?的なものに出会う。幅1mの筆で赤い絵の具を叩きつけたかの様なダイナミックな作品があり、絵として特にいいと思ったわけではないが、厚い絵の具が固まっている部分がすごく触ってみたくなった。

 こんなのもあった。緑のキャンバスを三本の切れ目を入れた作品。私なりの考えですが、これは作品とは言わない。これは宣言に近いと思う。しかし、作品として展示されなければ宣言にならないというジレンマを抱えている、気がします。

 渡り廊下の様なところにはbookシリーズの作品があった。読めない本、というもので、文字順をデタラメにしたり、グラデーションに並べ替えたり、文字の密度をモザイク的にしてみたり、結構面白い。

 最後にですが、これが今回私にとっては一番の収穫だったのですが、金村修という写真家の写真が面白かった。モノクロ写真であり、そこに写っているのは端的に言って騒々しく雑多である。何が何でも画面全体を埋め尽くしたいのだ、という意思が見えるくらいである。しかし、それでいて妙に纏まりがあって、一つ一つ間違い探しをする時の様に所々を眺めるのが楽しい作品だった。

 モダンアート再訪は5/20までなので是非。

 

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