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詩人リルケを好きになると作家ヤコブセンも好きになる

 今日はかなり涼しいです。多分気温22度くらいじゃないかな(体感)。

 さて、リルケプラハ生まれの詩人あるいは作家。後期の詩としては『ドゥイノの悲歌』や『オルフォイスへのソネット』。小説としては『マルテの手記』が有名で、ヤコブセンは小説『ニイルス・リイネ』や『マリイ・グルッベ夫人』辺りが有名だろうか。

 私がリルケに興味を持ったのは、池澤夏樹『詩のなぐさめ』を読んでからのことである。このエッセイ本が詩のエスプリを教えてくれたのです。

 そこからまず、新潮社から出ている『リルケ詩集』(富士川訳)を読んだ。これはリルケの全著作からいいとこ取りした詩集。そして、この中にある詩で一番最初に好きになった詩は「幼年時代」(新詩集より)という詩である。

 幼年時代における邂逅などによって満たされていた日々を思い出すと同時に、それらの感覚が織り込まれた一本の糸の中で、私は今も戸迷いしているのだ、という詩である。

 中でも好きな一節は

あの頃 私たちの出来事は まるで 一つの事物や動物のそれのようであった あの頃の 私たちは 人間の世界と同じく 彼らの世界を生きて 縁まで形姿にみちあふれていたのだった

 である。私としては、ここを【境界】が取り去られたような心持で読んでいた。人間である私が事物や動物、つまり人間でないものと同一視できる存在になって、彼らの世界を生きる。人間の世界と彼らの世界の境界が無くなるのだ。ただもちろん、それを感じる幼年時代を過ごす少年少女にとってのみのことである。こう見ると、幼年時代というワードがかなり輝かしいものに見えてきたのである。

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 またリルケの書簡で『若き詩人への手紙』というものがある。詩を敬遠している人はこれを読むのもありだと思います。この中でもリルケ幼年時代について触れていてこういう一節がある。

それでもあなたにはまだあなたの幼年時代というものがあるではありませんか、あの貴重な、王国にも似た富、あの回想の宝庫が。

 芸術生活において如何に幼年時代が重要で、それを呼び起こす事が必要だとリルケは若き詩人に対して語っている。

 実際自分の幼年時代と言われても、何を思って何をしていたかも思い出せないのだけれど、幼年時代に思いを馳せることによって、それがたとえ虚構であったとしても新たな感触が得られるかもしれないという期待が現れるのだとも私は考える。一般的でない感覚というのはこういうところから生まれるんじゃないかとも思える。勿論すべての人にとって共通ではないかも知れないが、私は割とリルケの考えは好きなのだ。

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 さて、ここまでリルケ幼年時代の考え方について書いていたが、先ほど引用した『若き詩人の手紙』の中で、リルケヤコブセンを読むことを進めているのである。なんなら全集を集めなさいと言ってもいる。

 それで私はまず短編集『ここに薔薇ありせば』を読んだ。この中の特に「モーゲンス」という短編をリルケは勧める。そして私はそれを読み、その物語の言語の豊かさや抒情的な筋に圧倒されたのだ。ただ一方で旧字体であることから読みにくさは拭えなかったが…。

 そして次に長編の『ニイルス・リイネ』を読んだ。これはプロトタイプのときのタイトルが『無神論者』であることからも分かるが、ニイルスが無神論を貫くまでの物語である。それと同時に邦題は『死と愛』であり、多くの死と愛に直面する物語でもある。

 そして、この物語の序盤、ニイルスがまだ幼い頃、彼は母が読み聞かせる物語に涙し、その物語の行く末を心配するような感受性の豊かな子供であった。そのような幼年時代の描き方や成長した後半に幼いころを振り返って感じることが、如何にもリルケの考えと似ているのだ。いや、年代的にはニイルス・リイネが先なので、ヤコブセンに共感してリルケが詩を書いたのだと思うのだが。

 ヤコブセンの書く文章には魅力がたっぷり詰まっている。時折り、そこまで言うかとも感じさせられる比喩なんかもあるが、それも楽しい。そこで問題は入手方法だろうか。紙媒体で見かけることはもうほとんどないが、オークションでは偶に見かけることが有る。(私はオクで手に入れました。)おすすめはkindleです。kindleならば旧字が新字に直っていて読みやすいです。

 あとオークションにしても何にしても、ヤコブセンと検索すると、時計がいっぱい出てきます。アルネ・ヤコブセンの方が検索上位なのですね。

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